今月は、こちらに書いた対談集と、女流作家による女性主人公の小説を2冊、そして、ノンフィクション(これも女性によるもの)を1冊読みました。

夢を与える 夢を与える
綿矢 りさ

河出書房新社  2007-02-08
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 綿矢りさ(芥川賞)の3作目だそうですね。1,2作目は読んでいませんが。チャイルドモデルからアイドルになった女の子の物語。わかりやすく、事件が次々起こっておもしろいので、一気に読めました。

 アマゾンのレビューでは、「後味が悪い」「夢を与えない」など厳しい評価もありますが、私は、ありかな〜と。幼いときから、もしかすると生まれる前から、目的や役割を周りから与えられ、主体的に生きられないとき、人はどうなるか… 悲しい物語です。でも、最後は、一見悲惨にみえる状況のなかで、主人公が初めて主体性を獲得したのかなと…これから彼女の本当の人生が始まるのかなと私には思えました。




グロテスク グロテスク
桐野 夏生

文藝春秋  2003-06-27
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 同じ作家の「OUT」に衝撃を受けたので、これも期待して読んでみたら…すごかった! 力のある作家ですね、桐野夏生…

 ずいぶん前ですが、東電OL殺人事件というのがありましたよね。あれをモチーフにした物語(事実とは全く関係ないですが)。数人の登場人物の告白、という形の構成で、これが新鮮。ひとつの事象を、別の人が語るとかなり違う話になってしまう…「藪の中」のような小説です。

 姉と妹、父と娘、母と娘、父と息子、兄と妹など、さまざまな「ペア」が出てきますが、過剰な憎悪の対象か、過剰な愛情の対象か、になっています。光と影というのでしょうか、強い光が当たるところには、影も濃くて暗いものになるのですね。

 最後のほうで主人公が、「これらの人々はみな、私の一部でもある…」というようなことを言っています。そう、ここに出てくる人たちを、ひとりの人間の心の要素、私の心の要素、として読むこともできるかも…とても苦しいことですが。ここまで、人間の内面の真実(醜さ)を描ききれるとはすごい。そして、女は怖い(笑)と思いました。

 

生かされて。 生かされて。
堤江実

PHP研究所  2006-10-06
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 94年のルワンダの大虐殺を生き延びた女性の物語。フランクルの「夜と霧」にも通じる内容です。たいへん悲惨な状況のなかで、瞑想によって絶えず「神」とつながり、希望を捨てずに行動してきたことがよくわかります。信仰によって行動したときに、想像を超えた大きな祝福がある…とても勇気づけられます。多少美化されているかもしれませんが、彼女の両親や兄弟の人格と信仰が素晴らしく、子どもにとっての家庭の影響の大きさを改めて思います。読んでよかったです。